【低木】 ヤエクチナシ Gardenia jasminoides f. ovalifolia 〈常緑広葉樹〉
ふんわりとした純白の八重咲きの花から漂う、甘く濃厚な香り。 低木の庭木として不動の人気を誇るヤエクチナシをご紹介します。 |
「ヤエクチナシ」の名前や姿、形は知らなくても、 初夏の開花期に放つ濃厚な香りには、 誰しも一度は出会ったことがあるのではないでしょうか。 ヤエクチナシは個人のお庭はもちろん、 公共施設や街路樹の低木として 古来各所に植えられている、とてもポピュラーな品種です。 現在でも、花のシーズンになると ホームセンターのガーデン売り場で 前面に売り出されるほど、根強い人気を誇ります。 |
甘く濃厚な香りもさることながら、 開花の様子もまた良し!です。 上記の写真のように、螺旋状に閉じた蕾が、 ゆっくりと、優雅にほどけて開花します。 花姿はまるでバラか、もしくは近年人気のアデニウムか。 花の直径は約10cmと大ぶりで存在感抜群です。 常緑性で葉は美しい照り葉。冬場も青々としています。 ヤエクチナシは園芸品種ですが、 一重咲きのクチナシ Gardenia jasminoides は 東アジアに多く分布する暖地系の植物です。 ヤエクチナシも同様に暖地系ですが、 茨城県南エリアではまず問題なく露地植えで冬を越すことができます。 樹高は大きくなったものでも1m程度です。 |
病虫害について、よく言われているのが「オオスカシバ」です。 オオスカシバはハチのようなビジュアルをした「ガ(蛾)」で、 その幼虫(イモムシ)の好物がクチナシの葉、なのです。 もちろんヤエクチナシも例外ではありません。 その食欲たるや、部活帰りの高校生か!と言いたくなるほど旺盛で、 運が悪いと、木が丸坊主に…。 毎年、全くオオスカシバの食害がない植え込みエリアもあれば、 丸坊主にされてしまうお宅もあったり…と、 一概には言えないのですが、 オオスカシバはクチナシの葉が大好き!ということは揺るぎない事実です。 |
しかしよくよく考えてみると、 ヤエクチナシは丈夫な植物ですので、 丸坊主になったヤエクチナシの株が、そのまま枯れてしまった… という話は聞いたことがありません。 更にオオスカシバについては、 一般的な「ガ(蛾)」のビジュアルとは異なり、蜂のような風貌。 ボディ(?)も鶯色・茶色・そしてレモン色のボーダー柄で どことなく和風、渋い! (是非ネットで検索してみてください…!) 羽も、一般的な「ガ(蛾)」とは異なり「透明」なのです。 幼虫が蛹(さなぎ)を出て成虫になる際に 鱗粉をすべて落としてしまうのだとか。謎…。 このオオスカシバの不思議な生態、風貌に惹かれて、 自宅で卵から成虫に孵す過程を楽しむファンもいるほどです。 …と、ここまでヤエクチナシよりオオスカシバについて 熱く書いている私は、半ばオオスカシバのファンですね(^^;) ちなみにオオスカシバの幼虫にも、成虫にも毒はありません。 更に一般的な一般的な「ガ(蛾)」が夜行性なのに対し、 オオスカシバは昼行性! お子さんのいらっしゃるご家庭では、 生態をつぶさに観察できる打ってつけの昆虫です。 ヤエクチナシの花と香りを楽しみに育てつつ、 オオスカシバの幼虫を発見したら「来たな!」と構えて 成虫になるまで見守るもよし、 株を守りたいのであれば、スミチオンやオルトラン (ホームセンターで簡単に入手できます)で駆除するもよし、 手で捕まえて別の場所に移動させるもよし、だと思います。 何かと話題に事欠かないヤエクチナシ、おすすめです! |