【中木】 トキワマンサク Loropetalum chinense 〈常緑広葉樹〉
生垣の定番となったトキワマンサク。
パープルリーフがとても鮮やかですよね。
しかし、生垣だけに用いるのはもったいない。
葉色、花色、樹高、
バリエーション豊かなな
トキワマンサクをご紹介します。
まずは上の写真のトキワマンサク、
日本では最もポピュラーな
「ベニバナトキワマンサク」です。
葉色は濃厚な赤紫、
花も鮮やかな桃色。
花の時期でなくとも、
一際目を引きます。
ふわっとした印象の新芽も
また美しいですね。
画像がなくて申し訳ないのですが、
パープルリーフながら、
ベニバナトキワマンサクは
秋には葉が赤く色づきます。
紫色の葉が赤く色づいていく過程も
なかなか見応えがあります。
他の樹種と組み合わせて植栽すると、
よりベニバナトキワマンサクの
濃厚な葉色が際立ちます。
上の写真はヒュウガミズキと
ベニバナトキワマンサク。
双方が引き立てあって
とても素敵な葉色の風景になっています。
一方、実は上の写真の白花が
本家の「トキワマンサク」です。
葉は緑、
花色はほんのりクリームがかった白。
圧倒的に
ベニバナトキワマンサクの流通量が多く、
目に触れる機会が多いので
緑葉・白花のトキワマンサクを見かけると
とても新鮮な感じがします。
生垣でなく、
通常の庭木として植栽しても
とても爽やかな印象です。
ベニバナトキワマンサクは存在感があり、
お庭のアクセントとして
用いることが多いですが、
こちらの緑葉・白花のトキワマンサクは
あまりクセがなくナチュラルで、
他の植栽にも
合わせやすいタイプだと思います。
そして、まだあります。
上の写真は「緑葉・紅花」の
トキワマンサク。
葉色と花色の組み合わせが様々…。
本家のトキワマンサクの変種
(Loropetalum chinese var. rubra)として
位置づけられています。
緑葉・紅花種の新芽の美しさ。
芽出し赤く色づいた姿がから、
季節が進むと全体が緑葉に変化します。
この葉色のグラデーションは
緑葉・紅花種ならではです。
花色はとても鮮やかで
インパクトがありますが、
葉色が緑である分、
「銅葉・紅花種」より軽やかな雰囲気です。
これまで3タイプの
トキワマンサクをご紹介してきました。
①銅葉・紅花タイプ
②緑葉・白花タイプ(本家の「トキワマンサク」)
③緑葉・紅花タイプ
トキワマンサクを
お庭に植えたいとお考えの方は、
まず大きく分けてこの3タイプを基準に
検討されると良いと思います。
ちなみに、どのタイプも
樹木としての性質はさほど違いはありません。
しかし、葉色と花色の
組み合わせの違いで
これほど各々の醸し出す雰囲気に
違いが出るとは。
様々なシーンに合わせて、
葉色と花色の組み合わせを選べる
トキワマンサク、とても重宝します。
トキワマンサクの由来も
またとてもユニークです。
当時中国原産であることが知られていた
トキワマンサク。
日本には1905年に
中国から輸入した蘭の鉢に
一緒に付いていた苗が開花し、
これに「トキワマンサク」と
和名を付けたのが、
日本に於けるトキワマンサクの
歴史の始まり…
と考えられていましたが、
実は、日本にも元来自生しており、
しかもその場所は
伊勢神宮の宮域林(神宮林)。
1931年に伊勢神宮で
トキワマンサクが見つかるまでは、
日本にはトキワマンサクは
自生していないと考えられていたのです。
その後、日本では
静岡県湖西市と熊本県荒尾市、
その他インドなどでも
自生が確認されました。
結構、白花
(いわゆる本家の「トキワマンサク」)も
開花すると華やかで
目につくタイプなのですが。
日本での自生地が
とても限られた地域だったので
ずっと見つからず、名付けられず、
人知れず咲いていたようです。
これまで日本では、
トキワマンサクは
生垣として最も用いられてきたと
言っても良いと思います。
しかし単木のトキワマンサクも
また良いものです。
上の写真は先日守谷市の現場で植え付けた、
緑葉・白花のトキワマンサクです。
樹高は3mほど。
明るい新芽の色合いと、
建物の外壁の色との相性は抜群。
これに来春白花が付くと、
更に爽やかな印象になると思います。
トキワマンサクは最終的には
樹高5~6mほどに生長します。
葉張りも出る性質ですので、
広い場所での植栽を除いて、
定期的な剪定が必要です。
もちろん、生垣に用いると抜群の安定感、
密に一面を覆いますが、
小葉のテクスチャで
より繊細で上品な印象を与えます。
もし生垣で花も楽しみたい場合は、
開花の4月のあと、
花が終わった5月から6月上旬頃までに
刈り込みを行うと
花芽を切り落とさずに済みます。
(花芽は6月中旬ごろから形成されます)
しかし…そうは言っても
枝が伸び盛りになるのは
やはり梅雨時から夏、秋にかけて。
面と角をきっちり出した、
方形の生垣がお好みの方は
枝葉が伸びた時期に刈り込みを行い、
花芽は犠牲にせざるを得ません。
生垣で花を楽しむ際の刈り込みは、
枝の先に付く花芽を全てカットせず、
分枝する箇所まで枝を辿り、
残す枝とカットする枝を
適宜選んで剪定すると
ある程度花を楽しむことができます。
とっても手間がかかりますが。
更にトキワマンサクの進化は
止まりません。
葉色・花色・樹高のバリエーションは
増える一方。
上の写真は‘黒美人’という、
濃厚な黒葉のトキワマンサクです。
斑入りのものや、
花色が咲き分ける
(1株で白・紅・桃色の花が咲く)もの、
矮性品種で低木扱いができるものなど、
本当に様々なタイプのトキワマンサクが
通販などで入手できるようになりました。
是非お好みのトキワマンサクを
見つけてみてください。
年間を通してお庭を鮮やかに
彩ってくれますよ。