【中木】 スモークツリー Cotinus coggygria 〈落葉広葉樹〉
これはもう、否応なしに
目に飛び込んでくるビジュアル。
女性的な、ふわふわとしたフォルムが
最大のセールスポイント。
しかし葉色もまた、
「けむり」に負けず、秀逸なのです。
見所満載、性質強靭な
スモークツリーをご紹介します。
まずはこの綿菓子のようなものから。
この正体、「花そのもの」ではないです。
では何なのか。
スモークツリーは雌雄異株です。
雌木には、おなじみの
「けむり」が付きますが、
雄木には殆ど付きません。
こちらがスモークツリーの、
いわゆる「花」。雌花です。
雄花も雌花も花色は黄緑で、
ぱっと見た限りは、
雌雄どちらかわかりにくいです。
よく見ると、
雌花の中心にはしっかりとした
「雌蕊」があります。
雄花には中心に雌蕊が見当たりません。
花の大きさは3mmほどの小さいものです。
花が終わると、
稔性花(受粉が成功し、実が付く花)は
実が膨らんできます。
上の写真では、花序の先端に
ぽつぽつと見える粒状のものが「実」です。
不稔花(実が付かない花)は、
不思議なことに
その花柄(花を付けている柄)が
花後に伸びてきて、
細い毛が生えてくるのです。
上の写真では、
伸びかけた紅紫色の毛が確認できます。
この「けむり」の部分の役割、
恐らくですが、タンポポの要領で
種を風に乗せて
遠くに飛ばすためにあるのではないかと
推測します。
稔性花と不稔花の割合は、
圧倒的に不稔花の方が多い
(=けむりがもくもく)ので、
花は大事に実を結び、
実を結ばない花は
その大事な種を風に乗せて運ぶ…
素晴らしい生存戦略だと思います。
小さな黄緑色の
目立たない花の開花は5月ごろ、
その後6月ごろから
立派な煙が付き始めます。
アンティークカラーの
柔らかな色彩。
煙というより、
雲や綿菓子のように見えますね。
スモークツリーの原産地は
南ヨーロッパからヒマラヤ、中国。
樹高は2~4mほどになります。
性質は強靭で、
日向で水はけのよい場所でしたら
すくすくと育ちます。
生育は旺盛で、
上の写真のように葉張りも出ますので
主庭などの広いスペースで
のびのびと育てると、
初夏にはもくもくと
煙が樹木全体を覆います。
剪定を行う際は、
落葉期が良いでしょう。
適宜不要な枝を切り落とし、
丈を詰める剪定を行います。
強く切り詰めすぎると、
翌年にけむりが見られなくなるので
ほどほどに。
スモークツリー、
近年はその「けむり」よりも
カラーリーフプランツとして
重宝される一面もあります。
丸みを帯びた葉の形と、
透け感のある葉の質感も
ポイントだと思います。
特にどの品種も、
新芽の頃の発色の良さは
目を見張るものがあります。
その後、夏に向けて
葉色が緑色を帯びてしまう品種もありますが、
ご安心ください。
秋の紅葉もまた見物です。
とても育てやすいスモークツリー。
カラーリーフとしての役割を担いつつ、
特徴的な「けむり」のフォルム、
そして秋の紅葉まで。
年間を通して楽しむことのできる優良種です。
どうしても確実に
「けむり」を楽しみたい方は、
苗を購入する際、
「雌木」であることの確認をお忘れなく!