【メインツリー】 ヒメシャラ Stewartia monadelpha 〈落葉広葉樹〉
茶花の雰囲気を漂わせる、
とても清楚で控えめな花姿。
個人的に、この花を見るとなぜか
「冷たい緑茶」を連想します…。
今も昔も、庭木として不動の人気を誇る
ヒメシャラをご紹介します。
ヒメシャラの「姫」、
花がごく小さいわけでも、
樹高がとてもコンパクトというわけでもありません。
なのに何故、「姫」?
ヒメシャラの仲間に
「シャラノキ(ナツツバキ)」
という品種があります。
シャラノキはヒメシャラに比べて、
花も葉も大ぶりです。
つまりヒメシャラは、
シャラノキに比べて「姫」ということになります。
ヒメシャラの花の直径は1.5~2cm程度です。
因みにシャラノキの花は直径5~6cm。
やっぱり、「姫」ですね。
花のみならず、葉のサイズも、
シャラノキに比べて小ぶりです。
更に言えば、ヒメシャラは葉の表情が
比較的つるりと滑らかなのに対し、
シャラノキは葉脈がヒメシャラよりも
はっきりと浮き出ています。
その、花や葉のテクスチャが
小ぶりであっさりとしていることが、
恐らくナツツバキよりヒメシャラの方が
庭木として需要が高くなってきた
理由なのではないかと思います。
そして特筆すべきはヒメシャラの幹肌!
大木に育ったヒメシャラの幹は
見事な鹿の子模様になります。
これは樹皮がぽろぽろと
自然に剥がれ落ちてできる模様です。
ちなみに「日本三大美幹」
(日本人はこういうの、好きですよね)
のひとつはシャラノキ。
残りの2種はシラカバとアオギリだそうです。
シラカバは誰もが納得、アオギリは…(^^;)
こちらは株立ちのヒメシャラの幹。
細い幹は赤褐色でなめらかな質感です。
自然の林内でこの色の幹肌は
やはり一際目を引きます。
ヒメシャラは
自生地では樹高15mほどにまで生長しますが、
生育のスピードは比較的ゆっくりです。
また、ヒメシャラは
強めの剪定を嫌う性質があります。
太い枝などをいきなり切り落とすと、
枯れ込むこともあります。
元来、頻繁に剪定する必要がなく、
自然樹形で美しく整う樹種ですので
年に一度ほど、徒長した細い枝を
取り除く程度で良いと思います。
ヒメシャラの自生地は
本州(箱根~近畿地方)、四国、九州です。
湿度が高く、栄養分が豊富な山地に育つため
庭植えの場合は
乾燥しがちな環境ではあまりうまく育ちません。
西日がきつく当たる場所や
常に乾燥しがちな場所を避け、
建物の北側や東側の庭に植え付けると、
よく育ちます。
また、株元の乾燥を防ぐため、
低木類や宿根草をヒメシャラの足元に
添えると良いでしょう。
また、ヒメシャラはツバキ科。
チャドクガが付いた際は
適宜取り除きましょう。
予防策として、早春と真夏の時期に
オルトラン粒剤を根元に撒いておくと、
ヒメシャラが成分を吸い、
チャドクガが樹木に付かなくなります。
そして秋。
ヒメシャラの紅葉は「海老色」、
とても味わい深い色味です。
葉が散り去り、冬の姿は美しい幹が主役。
年間を通して見どころ満載の
ヒメシャラ、おすすめです。