【中木】 クロモジ Lindera umbellata 〈落葉広葉樹〉
ウメの花も盛りから徐々に
名残へと移ってまいりました。
次はいよいよサクラ!
早春の花の主役は
サクラで間違いないと思いますが、
その傍らで静かに、
しかし凛と咲いている花々も
実は多くあります。
今回ご紹介するのは「クロモジ」です。
ちょうどソメイヨシノなどのサクラと
開花時期が重なる、名脇役です。
ウサギの耳のように
ピンと立った若葉がとても印象的ですね。
和菓子用の高級楊枝の材料として、
その枝は古来重宝されてきました。
是非このクロモジの枝を手折った際の
「香り」を嗅いで頂きたいです。
とても爽やかで、少し甘い香り。
茶の湯の千利休も好んで
クロモジの楊枝を用いていたそうです。
本州から九州の雑木林に
普通に見られるクロモジ。
中でも伊豆半島では
「香料」としてのクロモジに早くから着目し、
明治時代後期には日本で初めて
クロモジ精油の抽出に成功したそうです。
この精油は化粧品や香水の原料として
海外に輸出され、
最盛期には伊豆半島に
搾油施設が20ヶ所以上あったとか。
その時代の搾油のシーズンに
伊豆を訪れてみたかったです。
花はレモンクリームで
小花が鈴なりに付きます。
残念ながら花に香りはありませんが、
新しい葉とセットになって小さく咲く花姿は
とても優しく、ほっとするフォルムです。
そしてクロモジの秋はまた美しい!
葉はクリアな黄色に染まります。
華やかに紅葉するというタイプではありませんが、
あまり主張しすぎず、さっぱりとした風貌が
和洋どちらの庭にも馴染みます。
雑木林でよく見かけるクロモジは
日向~半日陰を好みます。
性質は強靭で育てやすく、
庭木にぴったりです。
樹高は1~4m程度で
高木のように大きくはなりません。
中木扱いですが、
あまり大きくなる樹木を好まない方には
シンボルツリーとしてもおすすめです。
また、クロモジは雌雄異株ですので
花を楽しみたい方は、
苗や植木を購入する際に
雌雄を確認して購入されると良いと思います。
さりげなく優しい花姿と
秋の黄葉が楽しめるクロモジ、
おすすめです!